消費税の簡易課税制度 会計や税務、経理などで使える役立つ情報

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簡易課税制度
ここでは消費税の簡易課税制度について紹介させていただきます。

目 次
T.簡易課税制度とは
U.対象となる事業者
V.税務署への届出
W.事業区分とみなし仕入率
X.控除額の計算と経理処理
Y.原則課税と簡易課税

T.簡易課税制度とは
一定規模以下の中小事業者が、課税売上にかかる消費税額に一定の割合を乗じて、納付する消費税額を計算することができる制度です。

課税売上に係る消費税額から、課税仕入に係る消費税額を引いて、消費税の納付税額を計算する原則課税では、仕入、経費等の消費税を積み上げ計算するのが大変な事務負担になりますから、簡易課税制度を選択することにより、これを軽減することができます。

U.対象となる事業者
消費税の課税事業者のうち、簡易課税制度を選択できるのは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者です。

また、簡易課税制度は原則課税に代えて選択することができる特例制度です。したがって一定の手続きをしないと、この制度で申告することはできません。

V.税務署への届出
●簡易課税制度を選択する場合

簡易課税制度を選択する場合、その選択する課税期間(個人事業者については1月1日から12月31日までの1年間、法人については事業年度)の初日の前日までに『消費税簡易課税制度選択届出書』を税務署へ提出しなければいけません。

平成23年1月1日から始まる課税期間で簡易課税制度を選択する場合は、平成22年12月31日までに届出を提出する必要があります。

この効力は、『消費税簡易課税制度選択不適用届出書』を提出するまで継続されます。そして、最初に簡易課税制度を選択してから、2年間はこの制度による申告が強制適用されます
この間は原則課税で申告することができませんから、注意が必要です。

※平成22年度消費税法改正により、平成22年4月1日以降に調整対象固定資産を取得した一定の事業者は、簡易課税制度による申告を選択できない場合があります。

 国税庁HP参照→消費税法改正のお知らせ


(例)平成21年に事業を開始し、平成22年度中に消費税簡易課税制度選択届出書を提出した場合の申告。ただし、消費税課税事業者選択届出書及び、消費税簡易課税制度選択不適用届出書の提出はないこととする。

事業年度 課税売上高 申告 理由
 平成21年度 1,100万円 免税 基準期間なし
 平成22年度 900万円 免税 基準期間なし
 平成23年度 3,600万円 簡易課税 21年度の売上1,100万円
 平成24年度 5,100万円 免税 22年度の売上1,000万円以下
 平成25年度 4,000万円 簡易課税 23年度の売上3,600万円
 平成26年度 4,500万円 原則課税 24年度の売上5,000万円超え
 平成27年度 6,000万円 簡易課税 25年度の売上4,000万円

基準期間の課税売上高が1,000万円以下で、消費税の免税事業者になった場合や、5,000万円を超えた場合でも、翌期以降の課税期間に簡易課税制度の要件を満たしていれば、簡易課税制度による申告が継続されます。


●簡易課税制度をやめようとする場合

廃業を除き、簡易課税制度をやめるようとする場合には、そのやめようとする課税期間の初日の前日までに、『消費税簡易課税制度選択不適用届出書』を提出しなければいけません。
この手続きをした翌課税期間から、原則課税に戻ることになっています。

ただし、最初に簡易課税制度の適用を受けることとなった課税期間の初日から、2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、この届出書を提出することはできません。

W.事業区分とみなし仕入率
●みなし仕入率の適用に係る事業区分

○ 第一種事業・・・卸売業
定義:他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業をいいます。

○ 第二種事業・・・小売業
定義:他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで販売する事業で卸売業に該当しないものをいいます。
注意点:製造小売業は製造業に該当します。

○ 第三種事業・・・農業、林業、漁業、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給び水道業をいいます。
注意点:加工賃等の料金を受け取って役務を提供する事業は第四種事業になります。

○ 第四種事業・・・第一種、第二種、第三種、第五種事業以外の事業をいいます。
例:飲食店、金融・保険業等

○ 第五種事業・・・不動産業、運輸通信業、サービス業(第一種、第二種、第三種事業に該当するものを除く)をいいます。
注意点:飲食店は第四種事業に該当します。

第三種と第五種に該当する具体的な事業は、おおむね日本標準産業分類を基準として分類することになっています。
 
総務省HP参照→日本標準産業分類
●簡易課税制度のみなし仕入率の見直し(原則として平成27年4月1日以後に開始する課税期間から適用されます。)
簡易課税制度のみなし仕入率について、現行の第四種事業のうち、金融業及び保険業を第五種事業とし、そのみなし仕入率を50%(現行60%)とするとともに、現行の第五種事業のうち、不動産業を第六種事業とし、そのみなし仕入率を40%(現行50%)とすることとされました。
改正の詳細については、国税庁HPを参考にしてください。
国税庁HP参照→消費税法令の改正等のお知らせ(平成26年3月分)
●事業区分によるみなし仕入率表

事業区分の判定は事業者ごとにという区分ではなく、その取引ごとに行います。2つ以上の事業区分に該当する事業者もありますから、注意が必要です。

(改正後)
事業区分 みなし仕入率
 第一種事業  90%
 第二種事業  80%
 第三種事業  70%
 第四種事業  60%
 第五種事業  50%
 第六種事業  40%
(改正前)
事業区分 みなし仕入率
第一種事業 90%
第二種事業 80%
第三種事業 70%
第四種事業 60%
第五種事業 50%

 国税庁HP参照→簡易課税制度の事業区分

X.控除額の計算と経理処理
●控除額の計算

簡易課税制度での申告は、課税売上高を第一種から第五種事業に分類し、売上にかかる消費税にみなし仕入率を適用して、控除する仕入税額を計算します。

計算方法については国税庁HPを参照してください。

 国税庁HP参照→簡易課税制度

●消費税の経理処理

消費税の経理処理には税込と税抜があり、どちらの処理を選んでも良いことになっています。
税抜経理では預った消費税と支払った消費税を計算する必要がありますが、税込経理ではその必要がありません。つまり、経理処理が簡単なのは税込経理だといえます。
税抜経理をする場合は、会計ソフトの利用など、パソコンを使った経理が必要です。

原則課税で税込経理を選択すると、決算時に期首から期末までの支払った消費税を、個々の取引ごとに課税、非課税、免税に分けて計算しなければなりませんので、消費税の申告が難しくなります。

まとめると、次表の様になります。

基準期間の課税売上高 申告方法 経理処理
1千万以下 免税 税込経理
1千万超〜5千万以下 原則課税・簡易課税 税込経理・税抜経理
5千万超 原則課税 税抜経理
(税込経理選択可)

 国税庁HP参照→簡易課税制度の適用と経理処理


●税込経理と税抜経理の違い

@法人税では交際費の一部が損金不算入となりますが、その金額は税抜経理より税込経理の方が多くなってしまいます。

A資産を購入した際に、固定資産となるかどうかの判定は、税込経理、税抜経理で異なります。
税込100,000円の資産を購入した場合、税込経理では資産に計上しますが、税抜経理では92,592円となりますから、購入時の経費とできます。
中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入の特例や、一括償却資産の判定も同様に、税抜経理の方が適用範囲が広くなります。

 国税庁HP参照→税抜経理と税込経理の選択適用(法人の場合)

 国税庁HP参照:→税抜経理と税込経理の選択適用(個人の場合)

Y.原則課税と簡易課税
基準期間の課税売上高が5千万円以下の課税事業者は、原則課税か簡易課税を選択できる事は既に説明しました。実際どちらを選ぶかは、納税額の少ない課税方式を慎重に判断する必要があります

みなし仕入率を掛けて計算した仕入控除額が多いのか、支払った消費税額が多いのか、前年度の実績や、来年度の投資計画などを考慮して有利な方を選択することになります。

※税法の改正や個々の事情により掲載の内容と異なる場合があります。
  個別の案件に関しましては、税理士にお尋ねください。


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